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Ghetts - Conflict of Interest
Ghetts - Conflict of Interest
あけましておめでとうございます。今年のGrimeはコロナの影響でなかなかギグが出来なかったですが、後半復活してきましたね。UK本国ではワイリーがバーミンガムのMCとクラッシュしたのが話題になりました。また、日本とも馴染み深いBUTTERZのElijahたちが、ブラジルのグライム……Brimeをフィーチャーしたのも印象的でした。今はUK Drill全盛期ですが、グライムはグライムで楽しんでる、って感じでしょうか。さて、今年の一枚ですが、例年通りアルバムから選ばせて頂き、自分は「Ghetts - Conflict of interest」を挙げます。これは中々の大作でしたが……まずは彼のキャリアを簡単に振り返ってみましょう。Ghetts(ゲッツ)は2000年代初頭からこのゲームに関わってきたベテランNCです。(Ghettoという名義でもリリースをしています。)彼のキャリアは刑務所からスタートします。お勤め中に作り上げたMix tape、「2000 & Life」が話題となり、Kanoの1st alubm「Home sweet home」へ客演をしています。続くmixtape「Ghetto Gospel」、そして「Freedom of speech」が彼の評価を決定づけます。それらのmix tapeの中から一番有名な曲を選ぶとすればやはり「Top 3 selected」でしょうか。https://youtu.be/UYdLxtnkgHEプロデューサーはRapid。セルフボースト系の曲ですが、彼の怒り狂ったような……(そう、他のグライムMCと比べて、彼のrapは圧倒的に怒り狂ってるんです。)スタイルが完全に完成しています。グライムクラシックとして、今でも現場で流れる事がありますね。トップMCの地位を確固たるものにした彼は、2008年のBETアワードにもノミネートされています。(受賞者はGiggs。)個人的には2010年にリリースされた「Calm before storm」もベストです。是非チェックを!さて、2010年代に入ってしばらくはアルバムのリリースはなかったのですが、コンスタントにヒット曲、客演曲を中心に活躍します。Rude kidと組んで作り上げた「One take」は、オケと合わせて一発クラシック認定。グライムの真髄を体現した一曲と言っても過言ではありません。https://youtu.be/PhI0Ug8CotYさて、長くなりましたので、キャリア紹介はこの辺で終わりとし、改めて最新作「Conflict of interest」を紹介しましょう!本アルバムのタイトルを日本語に訳すと、「利益背反」。このタイトルからだけでもさまざまな想像ができてしまいますね。自分は、このアルバムで彼は、ラッパーとしての彼と、より「本人」の部分(彼は父親でもある)がぶつかり合っている様や、ある種の「葛藤」を表現しているように思えます。彼はインタビューで、かつてエゴまみれの人間であったことや、周りが売れていくことに対して大きな焦りを抱えていたことを率直に語っています。彼の20年近いキャリアの中で、思うことが多々あったのではないでしょうか。本アルバムに収録されている楽曲のトピックとサウンドは多岐に渡り、エドシーランをフィーチャーした「10000 Tears」(これは明確にポップシーンを意識してますね。)から、Gファンクのようなシンセを多用した「Fire and Brimstone」、「Hop out」、そしてJaykaeとMoonchild Sanellyを招聘し、前述のTop 3 selectedをHookでは弾き直したストリートスマッシュ、「Mozambique」など、多岐にわたります。しかし、全編を通してかなり落ち着いた……ある種の退廃的、暗黒的な雰囲気が支配しています。かつての怒り狂った彼のラップを知っている人間からしたら、全くの別人です。こういったサウンド面にも彼の人間的な成長と、葛藤を垣間見ることができるのではないでしょうか?また、グライムには珍しく生っぽいストリングスが多用されているのも特徴でしょう。ストリングスやホーンは、ある意味グライムのプロダクションには欠かせないものですが、本作はどこかからサンプリングしてきた!とか、チープなソフトシンセで作りました!という代物ではなく、かなり高品質かつ音楽を勉強してきた方が背後にいるように思えます。生楽器なのかは分かりませんが、相当プロダクションに力を入れた様子が伺えます。本作を聞いていて、自分はなんとなく「映画的」だな、と感じました。それはもちろん、映画の劇伴のようなストリングスの使い方に原因を求めることもできるのですが、もう一つ理由があります。大体のアルバムって、曲がだんだんフェードアウトして、数秒したら次の曲、という作りが普通だと思うんですが、これは違うんです。全部が全部、というわけではありませんが、多くの曲間が繋がってます。もしくは、いつ終わったのかわからない予想がつかない曲の展開が続き、明確に曲を区切るタイミングが希薄なんです。畢竟、起承転結が一連の流れで続き、一つの時間軸に沿って進展する芸術を見ている感覚に陥ります。これって映画じゃない?また、個人的にもっともグッときたポイントは、Stormzyをフィーチャリングした「Skeng man」でしょうか。みなさんがどうお考えかは分からないのですが、自分はStormzyは明確に「ポップスター」だと考えています。なので、彼が時々ストリート回帰を狙ったような楽曲をリリースするのは正直「?」でした。しかしながら、今作のようなフィーチャーされる形でハードな曲をやるのは、個人的にはハマり役でした。GhettsというMCがいまどういった立ち位置にいるのか、そして何を考えているのかがよく見えてきますよね。そしてなにより、本作のビデオが素晴らしい!https://youtu.be/kuQPdO-ysic全編モノトーンで作られておりド渋い上に、エキストラ役の演者が凶器を持って全力疾走!良い。(余談で恐縮だが、誰かが全力疾走するビデオは良質なビデオが多いというのが個人的な偏見かつ持論。なぜかというと、誰かが走れるスペースを確保できる上に、走る演者を撮影できる機材、カメラマンが投入されているという「予算面での強さ」が窺えるから。)それにD double Eなどの有名アーティストたちが次々とカメオ出演してくるシーンはグライム好き的に感無量。かなり唸らせられる出来に。さぁ、最後のまとめです。コロナ禍や、シーン自体の高齢化(といっても皆んな40歳前後くらいですが……)といった背景もあるなか生まれてきた、「大人のグライム」といえるのではないでしょうか。或いは、今まさにグライムが「怒り猛るHoodの少年少女」のものから、「Hoodでも、その外でも辛酸を舐めてきた大人たち」のものにトランスフォームしている最中なのかもしれません。(これは今のアメリカのメインストリームヒップホップにはない感性では?という話もしたいのですが、そこまで米国産を聞いていないので無駄に風呂敷を広げるのはやめようと思います。)今年は絶対短く書こうと思ったのですが、まいどながらの長文になってしまいました。改めて最後までお読み頂きありがとうございます。今年もよろしくお願いします。
Personal Best
ブラジリアン柔術
グレイシー一族の誰かがこう言ってました。「ブラジリアン柔術は世界最高の格闘技だ。何故なら、今はレスラーやキックボクサー、さまざまなバックボーンを持つ選手がMMAで活躍しているが、誰一人柔術の技術を知らない者はいないんだ。」2020年の年末のジム内大会で二連敗してから、2021年あけて瞬間くらいからかなり真面目にブラジリアン柔術をしてきました。4月の大会でも負け、コロナによる出勤日数の低下も相まり、初めてきちんとブラジリアン柔術専門のジムに5月から参加しました。おかげさまで、7月の大会では金色のメダルを獲ることができました。先生やトレーニングパートナーの皆さんには感謝しても感謝しきれません。2022年も、金色目指して頑張っていこうと思います!30歳を超えて格闘技経験無しでも、BJJは戦い方次第でメダルを取れる格闘技です。また、マスター世代(つまり30歳Over)の競技人口が本邦では多く、生涯スポーツの側面もあります。みなさんも是非、ブラジリアン柔術、いかがでしょうか?!(音楽はどうしたって?まぁまぁいいじゃないですかテキトーにやってきますんで……)
Resolution of 2022
毎年お誘いいただきありがとうございます。書き手の皆さんの記事も毎回興味深く、その中に自分も加えて頂けるという、とても良い機会を頂戴していると思っています。また、年々積み上がっていくこのデータベース、数年がけの音楽DNAがプールされているこのベスト選、何かの冊子になって良いレベルではないかとおもっておりますが、そういうのはやっぱり難しいんですかね……?皆様の本年のますますの活躍を祈念しております。