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Make It Out Alive Manga Saint Hilare
https://mangasainthilare.bandcamp.com/album/make-it-out-alive
「2020年は大変な年になってしまった。」という一言では表しきれないレベルで混沌の一年となってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか? この記事をお読みだということは、 立派に生き延びられたということかと存じます。 2021 年も、 今暫くは全世界同時進行形で先行き不透明な生活が続くわけですが、 しぶとくサヴァイブして参りましょう。「 しぶとい」。 そう、 2020 年のグライムこそ正に「 ベテランのしぶとさ」 が垣間見えた年でした。 振り返ってみると、 往年のアーティストたちが積極的にアルバムリリースを重ねた年であったと感じます。 2019 年の年末( 各種配信サイトだと20年に入ってから) にリリースされたJME『 Grime MC』、 Dizzee Rascalの『 E3 AF』、 Footsie『 No Favours』、 Jammer『 Natural Selection』、 D Double E『 Double Or Nothing』 といった黄金世代のリリースラッシュが印象深い一年となりました。 若手〜 中堅のリリースとしては、 まずMez『 Tyrone 3』。 中堅どころの顔役になって来ましたが変わらずフレッシュですね。 聞き応えありますよ。 個人的な注目株としてはSaskilla。 最新作『 Godson 1.8』、 確か12月31日にリリースされたはず。 ラップが熱い! そしてラップでもスピットしていますがオールドスクールグライム大好きっ子です。 ぜひ注目してほしいアーティスト! バーミンガム勢もシングル単位でのリリースが目立ちましたが、 やはり本地域の今年を代表する作品といえばDarxが取りまとめたV.A.アルバム『 Summer Season Sprayout』 でしょう! ロンドンとは一線を課す「 筋肉質」 なグライムを発射し続けるMCたちがそろい踏み。 最近の緩いラップに飽きた、 皆んなフローが同じに聞こえると言った現状( Not 症状) にお悩みのかたは是非。 飛ぶぞ? 国内でも同様にベテラン勢に動きがあった年であったと感じます。 Catarrh Nisinさんの記念すべき2ndアルバム『 Anger Log』、 年末に粗悪興業からリリースされたDekishiさん7年越しの新作『 Cult』。 国内トップのお二人のアルバムに共通しているのは、 UKのグライムを日本語で再現した、 という代物ではなく、 既存のグライムを踏み台に独自の領域にまで手を伸ばしているという点でしょう。 素晴らしい出来です。 そのほか、 各種シングルのリリースも含めるとかなりの量になってしまうため、 主なアルバムをご紹介の上ここでいったん終了。( 余談ですが、 BS0さんのサウンドをお好みのあなた! NUMA CREW feat.Riko Danの『 BABYRON』、 Flowdan『 Welcome to London』 は聞いてくださいね。) つまり、 ここからが「 今年の一枚」 となりますが、 しかしちょっとまってください。 とりあえず上にあげたどれかが、 あなたにとっての「 2020 年のグライム」 になるのは間違い無いので、 まだ聞いてないアルバムがあればできれば全部聞いてから戻って来てもらえれば嬉しいのです。 というのも、 自分が選ぶ2020年の一枚は、 上のアルバムを全て聞いた上で聞かないとよくわからないと思うので。 聞いていただけましたでしょうか? それではPAKIN的2020年の1枚はこちら。 Manga Saint Hilare『 Make It Out Alive』 アルバムのタイトルが「 生還する」、「 生き延びる」 という本作。 これを説明する前に、 そもそもMangaのことを知っている方は、 日本でグライムを聞いている方でも少ないと思いますので簡単にキャリアを説明しましょう。 あのWileyが2004年に立ち上げたRoll Deepクルーのメンバーとなったのが彼のキャリアのスタートです。 キャリアから分かる通り、 かなりの大ベテラン。 しかしながら、 上であげたようなレジェンドクラスのMCと比べると、 はっきり言って存在感は希薄なMCでした。 Roll Deepの活動が沈静化した後、 彼もかなり長い期間アンダーグラウンドに潜りっぱなしでした。( リリースを重ねてはいたのですが……) チャートにも上がることは無く、 ビデオを出してもそんなに再生されるわけでは無い、 これと言ったハイプがあるというわけでは無い…… 批判を恐れずはっきり言いましょう。「 諸先輩から「 あいつは凄い」 と言われるけど最近のヤングなボーイズ& ガールズには全くピンと来るものが無い、「 しぶとい」 おじさんラッパー( ただし曲は出すから多少敬意は払われる)」、 そんな存在。 あなたの街の行きつけのクラブやライブハウス、 もしくは路上にもそんなおじさんが一人はいるはずです。 そんな彼が今年になってリリースした本作のテーマとは? 英紙Gurdianのインタビューを読み解きましょう。 https://www.theguardian.com/music/2020/jul/01/manga-saint-hilare-grimes-overlooked-mc ここで彼が語った言葉を( PAKIN的に) 意訳すると「 幸福とセルフケアをつなぎ合わせ、 ゆっくりと、 より深く自身を内観する試み」 であり、「 あなたが行ってきたこと全てに根差していています。 世界があなたを殺そうとするのを許さないということです。」「 みんなの問題は状況によって異なりますが、 共通しているのは常に動き続けることが重要です。」 と説いています…… すいません、 意味がわからないと思うのですが、 俺もわかりません。 分かるやつは原文に当たってくれ頼むわ。 しかし、 インタビューを読み進めるとなんと無く意図が理解できると思います。 インタビューでも語っているのですが、 彼はWileyのような成功を治めることができず長年苦悩し続けたとのことです。( 就職すべきか悩むこともあったとのこと。) その長年の苦悩、 煩悶を経て、 やがて自分自身についてより学ぶことができた、 と語っています。 今では「 自分の居場所を見つけることについての、 恐れや不安について話す余裕があります。( 意訳)」 とのことで、 そのような苦しみに一区切りつけた様子が伺えます。 そもそも先に挙げたようなレジェンダリーなアーティストたちとは全くちがう、 自己実現を達成できないフラストレーションや、 周囲は成功していくのに自分だけは売れないと言った焦燥感、 そう言ったところから彼のアートが生み出されているわけですね。 ずばり、 本作品は彼の深い深い苦悩と、 そこからの開放を描いた作品となっているのです。 リリックを追いかけてみましょう。 イントロに当たる1曲目「 Escape Plan」、 この最初の部分を訳してみました。 元カノは全員同じように見える。 俺はまた同じ間違いをし続けている。 ずっと座って何かが変わるのをまっていた、 でも何も変わらなかった、 なぜなら俺自身が変わらなかったから。 母親の家の小さい部屋の中に居場所を探していた。 ただただ宙を眺めていた。 そして、 ここから脱出しなきゃと思ったんだ…… こんなスタートをこのアルバムは切っているわけです。 まさかの子供部屋おじさんカミングアウトから始まるわけですよ。 この時点でこのアルバムは生半可な代物では無いと気付けると思います。 半端ない。 アルバムで最も激しいの曲である『 Trample』 での最初の第一声は、「 まず言いたいんだ、 俺たちは全然似てないよな、 そして俺は彼らとも違う」 と自身の孤独を暗にラップし、『 Less money More problem』 では「 曲を録ると金が飛ぶ、 ビデオを録ると金が飛ぶ……」 と音楽活動を続けるだけでどんどん貧乏になっていくという姿を包み隠さずスピットしています。 普通のラッパーなら絶対に避けるであろうトピックにもどんどんと踏み込んでいくその姿勢は、 自暴自棄的でありつつも彼の覚悟が垣間見えるように思います。 ただ、 単純に自暴自棄のままアルバムを終えるわけではなく、 アルバムの後半に行くにつれてその葛藤から立ち直っていく様も描写しています。 Novelistをフィーチャーした『 Thoughts & Prayers』 では「 世界が俺を殺そうとしたが、 俺はまだここに立っている。 まだまだ勇気があり、 そして強く、 そして恐れてもいる…」 と恐怖心を打ち明けながらもポジティブな姿勢を打ち出す。 そしてアルバム最後の曲名は『 All 's Well That Ends Well』、つまり「終わりよければ全てよし」と銘打ち、「 君の番がやってくるんだ、 奴らは君を騙せないよ。 沢山の支えてくれる人たち、 リーダーは無し。 人生を教えてくれるレッスンを探そう。 ボーッとしてる場合じゃ無いぜ……」 と遺憾無くコンシャスネスを発揮します。 もはや感動しかない、 Mangaしか勝たん。 リリックの内容だけでなく、 Lewi BやBlay Visionなどのプロデューサー勢が作るビート・ プロダクションの質、 ミキシング、 マスタリングの確かさ、 アルバムの展開の巧さも含め、 2020 年のグライムこの1枚! と言っても過言では無いと思います。 ということで、 先に自分がなぜ一旦聞いていないベテラン勢のアルバムを聞いてからMangaを聞いてほしいか、 意図がお分かりいただけましたでしょうか? 人生における挫折や苦悩というのは、 普遍的なテーマではありますが中々素直に開陳するのは難しいわけです。( 特に、30 代半ばの売れないベテランラッパーとなると!) しかし、 そう言ったハードルを乗り越えて素晴らしいアートに昇華した彼が放つメッセージは、 大御所となった同期のアーティストたちが輝けば輝くほど、 より一層深みを増して聞こえてくるのです。 2021 年も、 皆で「 しぶとく」「 Make it out alive」 して参りましょう!
Personal Best
初めてのキャンプ
キャンプに初めて行きましたが、凄いよかったです。何がよかったって焚き火が激烈によかった。もう焚き火しか勝たん。早く道具揃えてキャンプに行きたい。でも調べれば調べるほどキャンプは沼だってことがはっきりして来て震えています。でもキャンプしたい。たとえ新しい沼にハマったとしても、俺はMake it out aliveしていくよ……2021!
Resolution of 2021
ジム内のBJJの試合で2試合全部落としたので、 まずは勝ち星増やして、 次は表彰台狙いたいですね。 キックとMMAの試合にも挑戦したいです。 音楽は、 溜まってるもの全部出します!